年中緑色の芝と、冬茶色く枯れてしまう芝のお話

 

公園やお庭などで、冬茶色く枯れていた芝が、春、緑になるのは季節感があってよいものです。
「枯れ芝」は冬の、「芝焼」「若芝」は春の俳句の季語になっています。
「青芝」となると夏の季語だそうですが、近頃のサッカー場や冬が最盛期のラグビー場の芝も、
冬に真っ青な緑の芝ですよね。どうなっているのでしょうか?

 

2月
愛鷹広域公園野球場の 「枯れ芝」

4月
愛鷹広域公園野球場の「枯れ芝」
から「若芝」へ入れ替わり頃 
5月
愛鷹広域公園野球場の「若芝」中央
作業車は枯れ芝をかき出す作業中

7月
愛鷹広域公園野球場の「青芝」 
野球場はコウライシバ

8月の
愛鷹広域公園スポーツ広場の
「青芝」子供サッカー教室で
教えるラモス監督
ここの芝はティフトン419
2月の
愛鷹広域公園スポーツ広場の
「青芝」と手前の「枯れ芝」
 
季語がまちがっているのかな?

間違いではありません。その秘密の「かぎ」は、「日本芝」にあります。俳句の季語は、勿論日本生まれで、日本在来の季節感を短い単語に託していますよね。「日本芝」も日本在来の在来種の草の一つで、そのうちの「ノシバ(野芝)」の学名は"Zoysia japonica"(ゾイシア ジャポニカ)と言います。
ジャポニカ産であることが世界中に公認されているわけです。その日本芝は、夏芝(暖地型芝草)と呼ばれ、気温が摂氏10度を下回ると活動を停止し、葉は枯れてしまい、休眠してしまいます。と言うわけで、季語に使われた対象は日本芝で、夏は青々とした「青芝」、冬は「枯れ芝」となって休眠し、春摂氏15℃になると活発に動き出して「若芝」となるのです。
では、冬青い芝は、どうして青いのでしょう?
冬青い芝は、日本芝と種類が異なり「冬芝」と呼ばれます。冬青い「麦」の一種と思ってもらえるとわかるでしょうか。冬、青々としたサーカー場で多用されるペレニアルライグラスという芝は、日本名を「ホソムギ」と呼ばれています。冬芝(寒地型芝草)と呼ばれる草種は、冬は緑を保っていますが、夏には弱く、「夏バテ」をしてしまい、時には「溶けるように枯れてなくなってしまう」ことも多く、愛鷹広域公園の「スポーツ広場」の真ん中付近はこのために、毎年裸地化してしまいます。「スポーツ広場」の真ん中付近は、ペレニアルライグラスだけの状態のために、夏、消えてしまうように冬芝がなくなってしまうのです。

 

冬芝だけの場所は、
夏禿げてしまう「スポーツ広場」
 

では、年中緑を保っているのはどうしてなのでしょうか?
冬芝だけで夏を越す事が出来る芝の種類もあります。このタイプのサッカー場は、静岡スタジアムエコパや鹿島スタジアムが有名です。それでも夏バテはしますから、管理に大変な気を使いますし、時には夏枯れで茶色くなってしまう場合もありました(有名なグラウンドでも)。
夏型の芝と、冬型の芝の両方を使っているタイプのグラウンドもあります。日産スタジアムや、霞ヶ丘国立競技場などはこちらのタイプです。このタイプをウィンターオーバーシード(WOS)を行っているグラウンドと呼んでいます。愛鷹広域公園の多目的競技場もこのタイプです。
「ウィンターオーバーシード」、直訳しますと「冬季、上から、種蒔き」となります。
この場合、冬に向けてある種の芝の上に、別の芝生の種を撒くことを指しています。この詳しい話は、次回お話致しますが、「ある芝」と「別の芝生の種」について先にお話いたしましょう。

 

夏芝と冬芝

 

「日本芝」を夏芝といいましたが、「日本芝」には、ノシバ、コウライシバ、ビロードシバなどがあります。
ゴルフ場のパッティンググリーンに使用されるヒメコウライもこの仲間です。コウライと名がつくのですから朝鮮半島が原産と皆さんは思われると思いますが、コウライシバは、ノシバより暖かいところを好みますから、朝鮮半島にも自生種はあるでしょうがそれ程多くはありません。
むしろノシバの自生のほうが多いはずです。
いずれにしても、ニホン列島、チョウセン半島辺りが原産地です。
それ以外にも夏芝はあります。バミューダグラスが有名で、これの改良品種にティフトンと名が付くものがあります。
少しサッカー場などに詳しい方は、ハハー「419」の事だなと気付いた方もいらっしゃるでしょう。
先ほど紹介した日産スタジアムや、霞ヶ丘国立競技場、味の素スタジアムなどは「ティフトン419」にウィンターオーバーシードを行っているのです。419って中途半端な数字は何故?ッテ思っている方もいらっしゃるでしょうね!そうです、このほかにも「ティフトン328」「ティフトン10」等がアメリカ合衆国では商品化さていますが、これらの番号は、この芝を開発している時の番号のようです。この話をすると長くなりますから、機会があったらそのときに詳しく話しましょうね。セントオーガスチングラス、センチピードグラスなど最近日本でも流通してきた芝種や、海水ほどの塩分でも成長できるパスパーラムといった芝もあります。共通している事は、九州以北では夏芝は冬期間休眠し、冬枯れて葉が茶色くなってしまい、春活動を再開して緑を取り戻します。例外的に、沖縄県では、平均気温が高いために、夏芝の殆どが、休眠をせずに、年中緑を保っています。
休眠するかしないかの境目は、平均気温摂氏10℃が目安となります。

冬青い、冬芝の代表格は、先程でてきたペレニアルライグラスとケンタッキーブルーグラス、トールフェスクなどです。ゴルフをなさる方ならベントグラス(「ベント」)の名は知らない人は無いと思いますが、これも冬芝(寒地型芝草)です。これらは冬芝と名がつくのですから夏は苦手です。夏苦手な理由は、草種による差が多少ありますが、摂氏30℃で生育活動を停止し、摂氏35℃で枯れ始めるとされています。植物生理上の理由がありますが、書き始めると長くなりますので割愛いたします。
冬芝の生育は、夏芝の逆で、当然ながら寒冷地を好みますから、東北地方以北では、冬芝だけで通年緑を保っております。日韓サッカーワールドカップ会場となった、宮城スタジアム・札幌ドームなどが有名です。冬芝でも、草種によっては、関東地方以西以南でも夏を越す事は出来ます。先ほど触れた静岡スタジアムエコパ・鹿島スタジアムなどで、これらはケンタッキーブルーグラスという草種で維持されています。また、十分な散水や、サンドグリーンといった特殊な条件での管理手法が確立されてから、ベントグラスは九州でも夏を越す事が出来るようになりました。夏を越す事は出来ますが、冬芝にかかるストレスは強大ですから、この時期の管理には大変な気を使っています。 ペレニアルライグラスという草種単独では、試合で使いながら夏越しをするのが、むつかしいのが現状です。
ウィンターオーバーシードのお話は、次回お話しましょう。